Socratic Seminar

アクティブラーニングの一環としてSocratic Seminarが話題になっているという。その目標や形式について詳しく言及するスペースがないので省略するが、質問や対話を重視することでCritical ThinkingやLogical Thinkingのスキルを向上させる手段であり、まさに思考力・表現力・主体性等を高めることを目的とする日本の教育改革に合致するものだと考えられる。アメリカでは小学校の頃からこのような訓練を受けており、広義の学力を自然に身に付けている。従来知識教授(習得)型であった日本の教育現場において、このような手法が根付くにはまだまだ時間がかかりそうだが、「言葉を使って学び・考える」実践として今後注目したい。
さて、ソクラテスと聞いて以前読んだ本にあったエピソードを思い出した。著者が公立学校か私立学校のどちらで勤務しようか迷い、ある大学教授に相談したところ、「教育は私学が一番だ。そもそも教育というのはソクラテスの時代から対面教育なんだ。その対面教育ができるのが私立なんだ。私立に行きなさい。」とアドバイスがあったという。生徒との対話・対面教育を重視する一人の教育者の姿勢に、心が熱くなったことを覚えている。その情熱をいつまでも忘れたくないと改めて感じた。

広告

THANK YOU, ICHIRO

3月28日付マリナーズの地元紙Seattle Timesに掲載された、”THANK YOU, ICHIRO”という見出しの全面広告が話題になった。それは彼を尊敬する元チームメイトのゴードン選手がイチロー選手の引退を受けて彼への思いを綴ったものだった。以下の一節のように、苦しい境地にあっても支え続けてくれたイチロー選手への尊敬の気持ちで満ち溢れている。
People don’t know how much you’ve helped me over these last five years, Ichi. We both know I’ve had good times, bad times, ups and owns, but your friendship never wavered once. You always stuck by my side through anything, and always had my back. If I was wronged, you would stick up for me every time, even if it hurt you getting on the field. I didn’t think a tweet or Instagram post was appropriate for the occasion, so I wanted to do it the right way and tell you how much I appreciate you as loudly as possible.
さて、今回この話題を取り上げたのは「友情」というテーマとは別にもう一つ理由がある。
It seemed like everyone else was huge and hit homers, but you stayed true to yourself, your work, your process, and, most importantly, your culture.
イチロー選手が、自身、仕事、プロセス、そして文化に対して忠実であったことが偉業を達成させ、それをゴードン選手が理解していることは注目に値する。時にマスコミや他のチームメイトから揶揄されることがあっても、自分自身を信じ理念やアイデンティティーを貫いたことに対する畏敬の念が垣間見える。ここに日本のグローバリゼイションのヒントが存在するように思われる。

※この広告には中高生が習う頻出文法・重要表現が多く含まれており、当分教材として使えそうだ。

Elephant in the room

きっかけは何であったが忘れたが、最近elephant in the roomという表現を知った。「周囲は気が付いているのに、あえて避けている話題」を指しているそうだ。この「象」の使い方は、ある意味コミュニケーション術の一つだと感じる。みんな理解しているにも関わらず、当事者や周囲の状況からあえて口に出さない配慮(時には戦略)。調べたところ、Google Book Ngram Viewerによれば、2000年ごろから、急激にこの”elephant in the room”という表現が多く使われるようになっているとのことだ。例えば避難民やLGBTのようなマイノリティと呼ばれる人たちについての対応の影響かもしれない。思えば日常的にもよくありがちなシチュエーションではある。最近学級や授業で、部屋にいる象を見て大はしゃぎしてしまう生徒が増えているような気もする。少し前の言葉で言うKY(空気を読めない)と通じるところがあろうか。また日本人は、「場を読みすぎる」ことによるコミュニケーション下手という批判もある。今後ますます多様性社会に身を置くと、このような状況に陥ることが多くなることが予想される。周囲の状況に配慮しつつも、きちんと敬意を払うようなコミュニケーション能力を身に付ける必要がある。同一民族同一言語で生活を続けた日本が、世界の人々と協働的課題に多く取り組むようになると、多くの確執が生じるのは当然である。幼いころから集団で生活し、失敗を含めた多くの経験をすることにより、部屋にいる象を見かけたときに、どう対処するかを学ばせることも肝要だと感じた。

Passion

こちらもピョートル氏の本から、経営思想家ゲイリー・ハメル氏の能力のピラミッドという概念に出会った。ピラミッドが6つの層に分かれており、下層から上層へ、⑥従順(obedience) ⑤勤勉(diligence) ④専門性(intellect) ③主体性(initiative) ②創造性(creativity) ①情熱(passion & zeal)と並ぶ。企業繁栄のためのピラミッドと捉えることができ、とかく日本の企業は新人採用や社員研修において、⑥⑤④を重視しがちだと言う。専門的な知識を持って、上司の命令を黙って聞き、黙々と働き続ける。会社には重宝されることだろう。ところが優秀な経営者は⑥⑤④のみならず、③②①を重視するのだそうだ。自らの意思で判断・行動し、情熱を持って従来存在しなかったものを創生する。内的動機がその人を突き動かし、会社に好循環が生まれるとのことである。Passionという単語を聞くと、いつもある生徒のことを思い出す。教師の指示には実直に取り組み実力も向上するのだが、自分の興味のあることには、情報収集力と行動力を活かして、教員も巻き込みながらとにかく主体的に行動する。やはり根底にあるものは①情熱なのだ。個人プレーではなく集団で協働的な取り組みをした場合のパワーは計り知れず、頼もしい限りである。かくいう自分も、多忙の中で東北大震災後ボランティアに出かけたり、地元愛知から東京や大阪までセミナーや研究会に参加したりするのは、内なる情熱がメラメラと燃えるからである。理由はない。ただ「行きたい。」のだ。自分の勝手な判断や都合でブレーキをかけずにひたすら突き進む。するとなんとなく自然に道が開けてくる感覚を覚えることがあるから不思議だ。年齢や経験を重ねて打算的になるのではなく、いつまでもこの熱い心を大切にしたいと思う。

「The Best Team」より

ピョートル・フェリクス・グジバチ氏著「世界最高のチーム グーグル流最小人数で最大の成果を生み出す方法」を読んだ。その中に世界共通の変化について書かれている箇所がある。詳細は以下の通り。ビジネスの現場を対象にしているが、それを教育現場と置き換えてみると、非常に示唆的な内容になることに気が付いた。また今後このような大きな変化を想定して、次世代を生き抜く若者を育てるために、今の教育をどうすべきかをもっと真剣に議論し、現場に落とし込んでいく必要があると感じた。(以下抜粋)
①モノ作りの世界から、仕組みづくりの世界へ
モノがいかに使われるか、いかにネットとつながるか、いかにシェアされるのかといった仕組み(プラットフォーム)を考えなければなりません。
②強欲な会社から、社会貢献の会社へ
成長しているのは主に「社会貢献」で動いている利他主義の会社(グーグル、メルカリ、ウーバー等)ベンチャーの方が社会貢献をベースにした利用者のコミュニティを新たに作れる。
③仕事の進め方はクローズドからオープンへ
いまの会社はオープン、産官学を問わない社外のパートナーやフリーランス、地域・社会活動をしている人たちなどとも一緒に動いていくという、開かれた協業主義の仕事の進め方になっています。
④管理の仕方はKPIからOKRへ
トップダウンでKPI(Key Performance Indicators 重要業績評価指標)を決めるのではなく、トップが示した大きなビジョンに向かって、個人が自発的にそれぞれのゴール設定をしていくOKR(Objective and Key Result 目標と主な結果)に変わっています。
⑤ピラミッド型の組織からツリー型の組織へ
ピラミッド型は、文字とおりお墓であって、上からの圧迫が強くて下が死んでいる無機物的な組織。草原に立つ枝葉の茂った樹木のような組織、オープンで外の業界とつながっているオーガニック(有機物的)なツリー型の組織でなければこれからは成長できません。
⑥計画主義から学習主義へ
ビジネスのスピードがどんどん速くなっている中で、これまでのような「計画を決めてから動く」は通用しない。1年後、2年後ではなくて、いまは猛スピードで走りながら考えて、走りながら変えていくという「学習主義」でなければ成果を上げられない時代。
⑦プレイングマネジャーからポートフォリオマネジャーへ
社内に限らず、社外の人材いや組織、テクノロジーといったあらゆるリソース(資源)を活用して、いかに問題を解決していくか、いかに価値をつくっていくかという「ポートフォリオ」(最適な組み合わせ)を考えることがマネジャーに必須の役割
⑧従業員への接し方は鵜匠方から羊飼い型へ
それぞれの従業員の自由度を高める羊飼いのような管理の仕方が求められている。個人個人が働きやすく、本人のやりたいことができるように、それぞれが最大のパフォーマンスを発揮できるような「場づくり」が大事になってきています。

様々な問題解決のために、チームで取り組むことの有効性、または効果を上げるためにはチームとしてどのように機能すべきかヒントを与えてくれる良書だと思う。ビジネス界と教育界とでは、求められるもの・追求すべきものが異なるものの、変化の激しい社会への対応力は養っておかねばならない。柔軟な思考や発想の転換などの訓練をしておく必要がありそうだ。

6つのC

ノーベル医学生理学賞を受賞した本庶祐先生が学生時代から追い求めてきたという、6つのCの話が興味深い。以前21世紀型の教育のkey wordとして4つのCについて、このブログでも紹介したが、今度は角度を変えて、本庶先生は時代を変えるような研究には6つのCを追求する必要があると主張されている。「好奇心を大切に、勇気を持って困難な問題に挑戦し、必ずできるという確信をもち、全精力を集中させ、あきらめずに継続することで、時代を変革するような研究を発信することができるのです。」すなわち、好奇心(Curiosity)、勇気(Courage)、挑戦(Challenge)、確信(Confidence)、集中(Concentration)、継続(Continuation)の頭文字である6つのCを大切にとのこと。これは医学生理学の基礎研究に限った話ではなく、大きな改革や前例のない課題に対して必要なプロセスを含んでいると思われる。このような言葉が並ぶと、一種の教師病で、授業中生徒に「この6つCのうち、あなたが最も大切だと思うものはどれか、理由も付して述べなさい。」と発問したくなる。自分ならCuriosityと悩んだ末Continuationを選ぶだろう。当たり前のこと、難しいこと、変わらぬことなどについて、継続して取り組むことは想像以上に難しいと思うからである。変化の激しい時代と言われている。だからこそ、一つのことに対して愚直に取り組み真理を追究する姿勢も価値があるのではないか。本庶先生の言葉に深く考えさせられた。

ZERO to ONE

これは話題のピーター・ティール氏の本(NHK出版)のタイトルです。無から有を生み出す価値観を起業の概念から多く学ぶことができます。そして以下は出口治明氏の「人生を面白くする本物の教養」(幻冬舎新書)からの抜粋です。
「・・・コピーロボットは、ミツ夫の代わりが務まるくらいですから、大変優れた機能を備えています。運動能力も言語能力も思考能力も人間そのものと言ってもいいくらいです。鼻を押した人間そっくりに行動し、周りの人は誰もコピーとは気づかないほどです。しかし、コピーロボットは鼻を押してくれる『手本』となる人間がいなければ、ただのでくのぼうでしかありません。押入れの片隅に転がっているだけです。ポテンシャルとしてはすごく高いものを秘めているのに、主体性や自主性がなく、一人(一体?)ではなにもできないのです。日本はモデルなき時代に入っています。・・・」 欧米では初等教育から意識される4C’sの概念の一つとしてCreativity(創造)が存在し、また改訂版ブルームのタキソノミーの最上位としてCreating(創造)が加えられたことは個人的に大変興味深く、どう授業に落とし込むかという研究テーマとなっています。今や、手本に追いつけ、追い越せの時代ではなく、過去には存在しなかった新しい課題に対して独自のアイデアや方法で対処し、イノベーションを起こしていく時代です。Logical thinker, Critical thinker さらにはCreative thinkerの育成が、教育現場に身を置く私たちにとって課題となりそうです。