Compass over maps 今後育てるべき力のヒント

InternetやAIなどが急激に発展する時代のうねりの中で、価値観が以前とは異なる社会への対応について、少し前になるが米マサチューセッツ工科大学(MIT)メディアラボの伊藤穣一所長が、著書『9プリンシプルズ』(早川書房)によって描き出した。教育界に身を置くものとして、将来の学びの姿について考えさせられる。その9つの原則とは・・・。
①Resilience over strength:今後の不確実性に満ちた時代を考慮すると、柔軟性や適応力・対応力が求められる。変化に対し正面からぶつかる強さより、柔軟な発想力や豊かな創造力を活かした復元力・回復力が必要とされている。
②Pull over push:情報が溢れている時代においては、従来のように中央集権型で情報等を押し込め管理することは困難であり、必要な情報を引き出す分散型のアプローチを重視すべき。
③Risk over safety:リスクを予測し回避することは重要だが、リスクを恐れずチャンスを追い求める姿勢が大切。リスクを想定しつつチャレンジする中で新しい物事を創り上げていく感覚が必要。
④Systems over objects:物事を個別に考えるのではなく、その関係性に着目して有効活用し新しい価値観を創出する時代。
⑤Compass over maps:スピーディに変化する時代において、すぐに書き換わる地図を持つよりも、あらゆる環境の変化にも対応できるコンパス(思考判断軸)を持つべき。
⑥Practice over theory:理論重視から実践重視の立場に立ち、その過程から積極的に学び、応用させていく姿勢が大切。
⑦Disobedience over compliance:従順や服従ではなく、本当にそれが正しいのか、他にもっと良い方法はないのかと疑ってみる姿勢が、新しいものを創出する源となる。
⑧Emergence over authority:AIの時代は、社会的権威・権力ではなく、必要に応じて作り出される時代。現場の即興的な発想や対処が求められる。トップダウンではなくボトムアップの時代。
⑨Learning over education。義務的権威的な教育より主体的自発的な学びが求められる時代。「何を学ぶのか」ではなく「どのように学ぶのか」が重視され、学び方を学ぶべき時代である。

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Kazuhiro Tsuji wins makeup Oscar 英語教師の収穫+α

今年3月、辻一弘さんがメイクアップ部門でアカデミー賞を受賞し話題となった。映画”Darkest Hour”でゲイリー・オールドマン演じるウィンストン・チャーチル用の特殊メイクを手掛け、その技術が高く評価された。記事によると、ゲイリー・オールドマンは辻さんの技術を高く評価し、今回はメイクアップに彼を指名したとのこと。辻さんも彼の俳優としての能力を認め合う仲であり、その信頼関係から、受賞インタビューで辻さんはステージ上で次のようにスピーチしている。”This is a dream come true for all of us, thank you. ~ It was a real honor to be on this incredible journey with you and we would not be standing here today if it wasn’t for you.~”  仮定法を教える時に、よくエリック・クラプトンのTears in Heavenの冒頭部分”Would you know my name if I saw you in heaven?”という歌詞を、息子を亡くしたというバックグラウンドとともにしみじみ語り生徒に紹介するのだが、今回新たに仮定法ネタができ、日本人の世界での活躍を喜ぶとともに、英語教師としての収穫を喜ばずにはいられない。
さて、辻さんは日本でのインタビューで「親や友人や先生の言うことを聞くな。」という趣旨の言葉を発していた。生徒にこの言葉の真意を考えさせてみた。周囲の様々な声を参考にしながらも、最終的には自分の責任と判断で進むべき道を選択していく・・・「自分の心の声に忠実であれ」と語る辻さんのような静かで強い若者が増えることを期待するばかりである。

The Fruit of war

私の2018年は1枚の写真とともにスタートしたと言っても過言ではない。某高校英語教科書にも掲載されている原爆投下後の長崎でアメリカ人によって撮られた写真。亡くなった幼い弟を背負い直立不動の姿で焼き場の順番を待つ少年の姿・・・。ローマカトリック教会のトップ、フランシスコ法王が世界の難民の姿に心を痛め、写真の裏面に自身のサインとスペイン語によるメッセージ(il frutto della guerra)を載せ配布した。 CNNでは”The Fruit of war”とされており、日本語では「戦争が生み出したもの」となっている。勉強不足の私には、fruit=フルーツ=果実=実りと短絡的に結び付けやすく、ここでのfruitの登場にはいささか違和感が残る。ある辞書を引いてみると、①果物、果実、フルーツ ②〈俗〉ホモ〔差別語〕、男性同性愛者、女性的な男、おかま〔差別語〕、ゲイ ③〈俗〉影響[感化]されやすい人、他人の言いなりになる人、だましやすい人、かも ④〈俗〉変人、変なやつ、変わり者、奇人 ⑤〔努力などの〕成果、結実 ⑥《fruits》果実類 ⑦収穫、産物、成果、結果 とありfruitという言葉のもつイメージの豊富さに改めて驚く。
さて、同じ立場なら写真の裏面にどんなメッセージを書いて世界の人々に配布するか生徒に書かせてみた。
War is over / Let’s pray for peace / How do you feel and what do you think / Do you want your sons and daughters to be like this / We should know what inhumanity took away. We should realize what we should protect / Seek for tenderness / War create nothing without sacrifice ・・・
多くを語らずとも、写真を見てメッセージを書くことで生徒が何か心に感じることを狙いとした。さて、その成果はいかに。

Googleが求める力

21世紀型スキルに関心があり、実際に最先端の企業がどのような人材を求めているのか知りたくなり調べてみた。するとGoogleの副社長・人事担当ラズロ・ボック氏のインタビュー記事がNew York Timesに載っていた。氏によると、「GPAやテストのスコアには価値はない。その人材の能力を知ることはできないことがわかった。」「成績が良いこと自体は悪いことではない。Googleの仕事には数学、コンピューター、コーディング・スキルなどが必要だが、良い成績がその分野にしっかり反映されていれば有利ではある。しかしGoogleはより多くのことに目を向けている。」そして、Googleには優秀な人材を採用するための5つの基準があるとのことだ。(以下記事からの抜粋)
①General cognitive ability
~the No. 1 thing we look for is general cognitive ability, and it’s not I.Q. It’s learning ability. It’s the ability to process on the fly. It’s the ability to pull together disparate bits of information.
②Leadership
What we care about is, when faced with a problem and you’re a member of a team, do you, at the appropriate time, step in and lead. And just as critically, do you step back and stop leading, do you let someone else?
③Humility and ownership.
And it is not just humility in creating space for others to contribute, says Bock, it’s “intellectual humility. Without humility, you are unable to learn.”
④Collaboration, adaptability
Your end goal,” explained Bock, “is what can we do together to problem-solve.
⑤Expertise
The least important attribute they look for is “expertise.” Said Bock: “If you take somebody who has high cognitive ability, is innately curious, willing to learn and has emergent leadership skills, and you hire them as an H.R. person or finance person ~.

リーダーシップ、協働性・適応能力、そして専門知識は言うまでもなく、「学ぶ力」を重視していることについては共感するところが大きい。社会や環境の要請に応じて、柔軟にしかも臨機応変に学ぼうとする力・態度は必要だと考える。そして、最も注目すべきは「謙虚さ」をあげている点である。他者の意見や新しい情報にしっかり耳を傾けることで、自分のアイデア・発想を膨らませ、より豊かにすることができる。この「謙虚さ」が採用基準に入っていることがGoogleの成功を支え、後押しをしていると感じた。覚えておきたい教訓である。

 

 

 

Star Wars ~最後のジェダイ~から

Star Warsの最新作を劇場で観た。ブームが去り平日夜8時ということもあり、観客は3人。独占したような優越感に浸り、自宅にいるようなくつろいだ気持ちで鑑賞した。この映画については熱烈なファンからは賛否両論あるようだが、以前の作品をあまり真剣に観てこなかった自分は新鮮な目で鑑賞でき、単品としてはストーリーも理解しやすく、楽しむことができた。さて、映画中盤、ヨーダがルークに向かって、”The best teacher, failure is.”と述べるシーンがあった。過去の経験・自戒の念を込めて語られたと思われるが、言葉の重みを感じる。成功体験を積ませることが教育の目標と思われがちで、日本人に欠けているとされる自己肯定感を向上させることにもなるのだろうが、一方挫折や失敗体験が人を成長させるのも事実だと思われる。失敗を失敗のまま終わらせるか、失敗から何かを学ぶのかは大きな違いではあるが、いかなる経験も成長の糧となり得る。問題はバランスの問題で、成功と失敗の両方の経験が不可欠であることを覚えておかなければならない。心構えとして、成功した時には感謝の気持ちを持ちノウハウを蓄積しておき、失敗した時には繰り返さないよう次回に活かすことが賢明だろう。そのような経験と姿勢が人間の器を大きくさせると言えそうである。

内なる言葉

この週末、積ん読状態であった本を一気に読んだ。その中に、コピーライターである梅田悟司氏の『「言葉にできる」は武器になる』があった。そこには『言葉には「内なる言葉」と「外に向かう言葉」の2種類がある。』『スキルで言葉を磨くには限界がある。』『考えているのではない。頭の中で「内なる言葉」を発しているのだ。』『「内なる言葉」を意識し磨くことが大切』「言葉が意見を伝える道具であるならば、まず意見を育てる必要がある」といった主張が並ぶ。確かに、考えるという行為は、言葉を使って行われている。また他愛もない日々の状況や感情も、全て言葉で表されている。豊富な語彙と表現力豊かな言葉が、深い思考を生むことには頷くことができる。
時同じくして、仕事の関係で(本当です)よく洋画を見た。そのセリフを聞いていると、英語話者は実に多くの「内なる言葉」を持ち、そしてそれらを外に向けて発していることがわかる。日本語話者は、おそらく「内なる言葉」を持たないか、心の中だけで発する傾向が強い。一方英語話者は言葉として実によく発し、多くの場合他者に伝えている。一匹の子猫を見たとき、何も感じず言葉を持たない人、「かわいいな」とだけ感じる人、そして「白と茶色のコントラストがきれいだな。何という種類の猫だろう。どこから来たのだろう。親猫はどうしたのだろう。」などと感じる(考える)人では、思考力や表現力に差が生じるのは当然のように思われる。
日本語話者は、まずは「内なる言葉」を持つこと・発する習慣を身につけること(=考えること)が最優先である。そして、その伝えたい内容や思いを、英語に乗せて上手に伝える技術を鍛えていくという姿勢が大切ではないか。それが英語上達の秘訣であるとも感じる。次の授業で試したいことがまた増え、楽しみができた。

Setsuko Thurlowさんのスピーチから

本年度のノーベル平和賞授賞式では、受賞を受けたICAN(核兵器廃絶国際キャンペーン)と共に活動してきた広島の被爆者サーロー節子さんがスピーチし、自らの体験をもとに核兵器廃絶を訴えました。スピーチの力強さだけでなく、彼女の生き方の力強さを感じるフレーズが続きます。hibakusyaの皆さんが高齢化する中、私たちがすべきことは何かを生徒と共に考える機会となりました。”Don’t give up! Keep pushing! See the light? Crawl towards it.” この精神を今後生徒と分かち合いたいと思います。以下スピーチの抜粋です。
・We rose up. We shared our stories of survival. We said: humanity and nuclear weapons cannot coexist.
・Each person had a name. Each person was loved by someone. Let us ensure that their deaths were not in vain.
・As I regained consciousness in the silence and darkness, I found myself pinned by the collapsed building. I began to hear my classmates’ faint cries: “Mother, help me. God, help me.”
・Then, suddenly, I felt hands touching my left shoulder, and heard a man saying: “Don’t give up! Keep pushing! I am trying to free you. See the light coming through that opening? Crawl towards it as quickly as you can.”
・As I crawled out, the ruins were on fire. Most of my classmates in that building were burned to death alive. I saw all around me utter, unimaginable devastation.
・Whenever I remember Hiroshima, the first image that comes to mind is of my four-year-old nephew, Eiji – his little body transformed into an unrecognizable melted chunk of flesh. He kept begging for water in a faint voice until his death released him from agony.
・To me, he came to represent all the innocent children of the world, threatened as they are at this very moment by nuclear weapons. Every second of every day, nuclear weapons endanger everyone we love and everything we hold dear. We must not tolerate this insanity any longer.
・These weapons are not a necessary evil; they are the ultimate evil.
・We hibakusha had been waiting for the ban for seventy-two years. Let this be the beginning of the end of nuclear weapons.
・To the officials of nuclear-armed nations — and to their accomplices under the so-called “nuclear umbrella” — I say this: Listen to our testimony. Heed our warning. And know that your actions are consequential. You are each an integral part of a system of violence that is endangering humankind. Let us all be alert to the banality of evil.
・To every president and prime minister of every nation of the world, I beseech you: Join this treaty; forever eradicate the threat of nuclear annihilation.
・When I was a 13-year-old girl, trapped in the smouldering rubble, I kept pushing. I kept moving toward the light. And I survived. Our light now is the ban treaty.
・To all in this hall and all listening around the world, I repeat those words that I heard called to me in the ruins of Hiroshima: “Don’t give up! Keep pushing! See the light? Crawl towards it.”
・No matter what obstacles we face, we will keep moving and keep pushing and keep sharing this light with others. This is our passion and commitment for our one precious world to survive.