ZERO to ONE

これは話題のピーター・ティール氏の本(NHK出版)のタイトルです。無から有を生み出す価値観を起業の概念から多く学ぶことができます。そして以下は出口治明氏の「人生を面白くする本物の教養」(幻冬舎新書)からの抜粋です。
「・・・コピーロボットは、ミツ夫の代わりが務まるくらいですから、大変優れた機能を備えています。運動能力も言語能力も思考能力も人間そのものと言ってもいいくらいです。鼻を押した人間そっくりに行動し、周りの人は誰もコピーとは気づかないほどです。しかし、コピーロボットは鼻を押してくれる『手本』となる人間がいなければ、ただのでくのぼうでしかありません。押入れの片隅に転がっているだけです。ポテンシャルとしてはすごく高いものを秘めているのに、主体性や自主性がなく、一人(一体?)ではなにもできないのです。日本はモデルなき時代に入っています。・・・」 欧米では初等教育から意識される4C’sの概念の一つとしてCreativity(創造)が存在し、また改訂版ブルームのタキソノミーの最上位としてCreating(創造)が加えられたことは個人的に大変興味深く、どう授業に落とし込むかという研究テーマとなっています。今や、手本に追いつけ、追い越せの時代ではなく、過去には存在しなかった新しい課題に対して独自のアイデアや方法で対処し、イノベーションを起こしていく時代です。Logical thinker, Critical thinker さらにはCreative thinkerの育成が、教育現場に身を置く私たちにとって課題となりそうです。

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Original ICT

ICTという言葉がブームになってもうしばらく経つが、私の勤務校周辺が地方にあることからか英語科の教員以外でこの言葉が何を指しているか理解できている教員が意外に少ないように感じる。「教室で電子機器を使えばICT」という一面だけが独り歩きしている感がある。Informationの捉え方の問題と、特にCommunicationの要素が抜け落ちていることが多い気がする。今一度ICTの目的や原点について再考察して授業を組み立てる必要があると自戒する日々である。さて、少し前、ある教育委員会主催のセミナーに参加した時のこと、教員がICT機器を活用するハードルの高さを危惧した担当者が、「私たちはICTのことを『いつもちょっとトラブル』と考えています。」と発言。機械上のトラブルが怖くて踏み出すことに躊躇する私のような教員には、最高の言葉の贈り物になった。またある記事には、Inclusive Connected Transformation(包括的に連携した改革)とあった。表現は違えど内容については的を射ている気がする。私としてはInteractive & Creative Teachingといったところか。今後ハード面が整い、どう使うかという議論が盛んになることが予想される。ブームに乗るのではなく、教員一人ひとりがICTに関わる理念・哲学・目標を明確に持ち、実践するという心構えが必要だと思われる。

Players first

ある大学のアメリカンフットボール部の監督・コーチの問題、日本ボクシング連盟会長の問題など、学生を餌にした大人の事情が明らかになっている。また、スポーツではないが、ある大学では性別によって一律入試の得点を操作していたというから驚きだ。さて、夏の甲子園第100回記念大会において、私が勤める高校が甲子園出場を決めた。朝練から始まり、授業後も遅くまで熱心に練習に打ち込み、気持ちの良い挨拶も欠かさない。5時間目の授業中に目を閉じていても心から応援したくなる。実は、今年の甲子園大会が大きな論点となっていることはご存知だろうか。そう、猛暑・酷暑の中の試合会場・日程についてである。ドーム球場での開催という意見もある。このような暑さの中での連日の試合はPlyers firstになっていないのでは指摘している。どうしても高校野球部員が甲子園球場での開催にこだわるとしても、選手の安全を最優先に環境を整えることがPlayers firstではないかと主張する。まだ経験や判断力の乏しい生徒の声を鵜呑みにするのではなく、大人には守る責任があると言う。多くの問題を一緒くたに考えることはできないが、大人のエゴとPlayers(Students) firstの間で論争が起きそうな気配ではある。少なくとも旧態依然とした精神論中心のスポーツ指導の是非が公となり議論を交わすことは悪いことではないような気がする。(旧態依然の英語教育論争・模試結果重視の英語教育論争も同様か・・・。)

Compass over maps 今後育てるべき力のヒント

InternetやAIなどが急激に発展する時代のうねりの中で、価値観が以前とは異なる社会への対応について、少し前になるが米マサチューセッツ工科大学(MIT)メディアラボの伊藤穣一所長が、著書『9プリンシプルズ』(早川書房)によって描き出した。教育界に身を置くものとして、将来の学びの姿について考えさせられる。その9つの原則とは・・・。
①Resilience over strength:今後の不確実性に満ちた時代を考慮すると、柔軟性や適応力・対応力が求められる。変化に対し正面からぶつかる強さより、柔軟な発想力や豊かな創造力を活かした復元力・回復力が必要とされている。
②Pull over push:情報が溢れている時代においては、従来のように中央集権型で情報等を押し込め管理することは困難であり、必要な情報を引き出す分散型のアプローチを重視すべき。
③Risk over safety:リスクを予測し回避することは重要だが、リスクを恐れずチャンスを追い求める姿勢が大切。リスクを想定しつつチャレンジする中で新しい物事を創り上げていく感覚が必要。
④Systems over objects:物事を個別に考えるのではなく、その関係性に着目して有効活用し新しい価値観を創出する時代。
⑤Compass over maps:スピーディに変化する時代において、すぐに書き換わる地図を持つよりも、あらゆる環境の変化にも対応できるコンパス(思考判断軸)を持つべき。
⑥Practice over theory:理論重視から実践重視の立場に立ち、その過程から積極的に学び、応用させていく姿勢が大切。
⑦Disobedience over compliance:従順や服従ではなく、本当にそれが正しいのか、他にもっと良い方法はないのかと疑ってみる姿勢が、新しいものを創出する源となる。
⑧Emergence over authority:AIの時代は、社会的権威・権力ではなく、必要に応じて作り出される時代。現場の即興的な発想や対処が求められる。トップダウンではなくボトムアップの時代。
⑨Learning over education。義務的権威的な教育より主体的自発的な学びが求められる時代。「何を学ぶのか」ではなく「どのように学ぶのか」が重視され、学び方を学ぶべき時代である。

Kazuhiro Tsuji wins makeup Oscar 英語教師の収穫+α

今年3月、辻一弘さんがメイクアップ部門でアカデミー賞を受賞し話題となった。映画”Darkest Hour”でゲイリー・オールドマン演じるウィンストン・チャーチル用の特殊メイクを手掛け、その技術が高く評価された。記事によると、ゲイリー・オールドマンは辻さんの技術を高く評価し、今回はメイクアップに彼を指名したとのこと。辻さんも彼の俳優としての能力を認め合う仲であり、その信頼関係から、受賞インタビューで辻さんはステージ上で次のようにスピーチしている。”This is a dream come true for all of us, thank you. ~ It was a real honor to be on this incredible journey with you and we would not be standing here today if it wasn’t for you.~”  仮定法を教える時に、よくエリック・クラプトンのTears in Heavenの冒頭部分”Would you know my name if I saw you in heaven?”という歌詞を、息子を亡くしたというバックグラウンドとともにしみじみ語り生徒に紹介するのだが、今回新たに仮定法ネタができ、日本人の世界での活躍を喜ぶとともに、英語教師としての収穫を喜ばずにはいられない。
さて、辻さんは日本でのインタビューで「親や友人や先生の言うことを聞くな。」という趣旨の言葉を発していた。生徒にこの言葉の真意を考えさせてみた。周囲の様々な声を参考にしながらも、最終的には自分の責任と判断で進むべき道を選択していく・・・「自分の心の声に忠実であれ」と語る辻さんのような静かで強い若者が増えることを期待するばかりである。

The Fruit of war

私の2018年は1枚の写真とともにスタートしたと言っても過言ではない。某高校英語教科書にも掲載されている原爆投下後の長崎でアメリカ人によって撮られた写真。亡くなった幼い弟を背負い直立不動の姿で焼き場の順番を待つ少年の姿・・・。ローマカトリック教会のトップ、フランシスコ法王が世界の難民の姿に心を痛め、写真の裏面に自身のサインとスペイン語によるメッセージ(il frutto della guerra)を載せ配布した。 CNNでは”The Fruit of war”とされており、日本語では「戦争が生み出したもの」となっている。勉強不足の私には、fruit=フルーツ=果実=実りと短絡的に結び付けやすく、ここでのfruitの登場にはいささか違和感が残る。ある辞書を引いてみると、①果物、果実、フルーツ ②〈俗〉ホモ〔差別語〕、男性同性愛者、女性的な男、おかま〔差別語〕、ゲイ ③〈俗〉影響[感化]されやすい人、他人の言いなりになる人、だましやすい人、かも ④〈俗〉変人、変なやつ、変わり者、奇人 ⑤〔努力などの〕成果、結実 ⑥《fruits》果実類 ⑦収穫、産物、成果、結果 とありfruitという言葉のもつイメージの豊富さに改めて驚く。
さて、同じ立場なら写真の裏面にどんなメッセージを書いて世界の人々に配布するか生徒に書かせてみた。
War is over / Let’s pray for peace / How do you feel and what do you think / Do you want your sons and daughters to be like this / We should know what inhumanity took away. We should realize what we should protect / Seek for tenderness / War create nothing without sacrifice ・・・
多くを語らずとも、写真を見てメッセージを書くことで生徒が何か心に感じることを狙いとした。さて、その成果はいかに。

Googleが求める力

21世紀型スキルに関心があり、実際に最先端の企業がどのような人材を求めているのか知りたくなり調べてみた。するとGoogleの副社長・人事担当ラズロ・ボック氏のインタビュー記事がNew York Timesに載っていた。氏によると、「GPAやテストのスコアには価値はない。その人材の能力を知ることはできないことがわかった。」「成績が良いこと自体は悪いことではない。Googleの仕事には数学、コンピューター、コーディング・スキルなどが必要だが、良い成績がその分野にしっかり反映されていれば有利ではある。しかしGoogleはより多くのことに目を向けている。」そして、Googleには優秀な人材を採用するための5つの基準があるとのことだ。(以下記事からの抜粋)
①General cognitive ability
~the No. 1 thing we look for is general cognitive ability, and it’s not I.Q. It’s learning ability. It’s the ability to process on the fly. It’s the ability to pull together disparate bits of information.
②Leadership
What we care about is, when faced with a problem and you’re a member of a team, do you, at the appropriate time, step in and lead. And just as critically, do you step back and stop leading, do you let someone else?
③Humility and ownership.
And it is not just humility in creating space for others to contribute, says Bock, it’s “intellectual humility. Without humility, you are unable to learn.”
④Collaboration, adaptability
Your end goal,” explained Bock, “is what can we do together to problem-solve.
⑤Expertise
The least important attribute they look for is “expertise.” Said Bock: “If you take somebody who has high cognitive ability, is innately curious, willing to learn and has emergent leadership skills, and you hire them as an H.R. person or finance person ~.

リーダーシップ、協働性・適応能力、そして専門知識は言うまでもなく、「学ぶ力」を重視していることについては共感するところが大きい。社会や環境の要請に応じて、柔軟にしかも臨機応変に学ぼうとする力・態度は必要だと考える。そして、最も注目すべきは「謙虚さ」をあげている点である。他者の意見や新しい情報にしっかり耳を傾けることで、自分のアイデア・発想を膨らませ、より豊かにすることができる。この「謙虚さ」が採用基準に入っていることがGoogleの成功を支え、後押しをしていると感じた。覚えておきたい教訓である。